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ステークホルダー間で共通認識をつくるーKJ法を使った課題のマッピング

こんにちは、「Airメイト」でUXデザインを担当しているmunazoです。
この記事では、以前所属していた組織でデザインチームの改善を行なった際のステークホルダー間で共通認識を作るプロセスについてお話ししたいと思います。

また、その際に文化人類学者である川喜田 二郎さんが発案されたKJ法を活用したところ、得られたものが大きかったため、KJ法を実際に行うプロセスについても詳しくご紹介します。

デザインの現場で起きていた問題

まずデザインチームの改善をするにいたった背景について、説明します。私が所属していたチームでは人数が増えたり、人が変わることで以下のような問題が起きるようになっていました。

・デザインの統一感が失われる
・仕様がなかなか決まらない
・エンジニアとのコミュニケーションコストが高い
・手戻りが何度も発生してしまう
・アウトプットの質が人によってバラバラ

これらの問題の原因となるものは、組織/プロセス/個人のスキル/技術的負債などそれぞれ異なり、それらの問題は絡み合っていました。

打ち手を実施したら出てきた、新たな課題

すぐ何か手を打たなくては.. と言う気持ちもあり、顕在化した課題の中で重要度の高いものから打ち手を実施していきました。

まずレビューの仕組みが整っておらず、口頭で透明性の低いレビューが行われていたため、その打ち手としてデザインレビューの場を設けました。しかし場を設けたものの、必要性がメンバーに理解されておらず、デザインレビューの場で「なぜデザインレビューが必要なのか」という議論にもなりました。

打ち手を打っているはずなのに状況がなかなか改善が見えません。現場のメンバーにヒアリングを行うと「今やってることで、よくなる感じがしない」「問題を直接伝えたのに、いつまでも解決してくれない」と言う答えが返ってきました。

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ステークホルダーの職種や立場によって課題と思うポイントが違う、重要度も人によって違う中で、課題や打ち手に対しての共感を十分に得られていなかったのです。事前にヒアリングなどは行い課題を洗い出して優先度を決めたつもりでしたが、課題設定のプロセスも自分の中に閉じたものだったため、共感を得難い進め方をしていることに気付きました。

KJ法に出会う

このプロジェクトを前に進めるためには、解こうとしている課題について共通認識を作ること、またその課題を設定するプロセスについて共感を得る必要があると考えました。なにか糸口はないかと思っていた時、文化人類学者である川喜田 二郎さんの『発想法』という本に出会いました。本の中で紹介されているKJ法は発散されたアイディアを収束する際に使われる代表的な手法です。という本に出会いました。本の中で紹介されているKJ法は発散されたアイディアを収束する際に使われる代表的な手法です。

KJ法を使えば、情報の関係性を図示することができるため、デザインチームが抱えている問題の全体像を描けるのではないかと考えました。そして問題の全体像を描くことができれば、ステークホルダー間で共通理解を得やすくなるのではないかと思い、KJ法を使って課題をマッピングを行うことにしました。

ここからは、実際に行なったKJ法を用いたプロセスについて、以下の流れで詳しく説明していきます。

1.  探検(情報の洗い出し)
2. 単位化(情報の粒度を揃える)
3. 空間配置(グルーピング)
4. A型図解(関係性を図示する)
5. B型文章化(言語化)
6. A型図解↔︎B型文章化を繰り返す
7. 簡略化

1. 探検(情報の洗い出し)

KJ法は収束フェーズの手法ではありますが、『発想法』の中では収束フェーズの前段階となる、探検のフェーズについても詳しく書かれています。探検フェーズが重要なのは、自分たちが問題としていることをお互いわかりあっている気になっても、それは思い込みであることが多く、食い違いが発生する場合がよくあるためです。そのため内部探検/外部探検のフェーズでは、多角的な角度から、多様な情報を集めるのが良いとされています。

そこでデザインチームについての問題とは言え、関わりのありそうなエンジニアやディレクターなどのステークホルダーも集めて、「問題に関係のあること」だけでなく「問題に関係がありそうなことは全て」ポストイットに洗い出しました。またポストイットを貼って行く段階で質問を繰り返して、参加者の頭の中にあるものを全部出し切りました。

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また職種間で言いづらいこともあるため、エンジニア/ディレクター/デザイナーと職種ごとに会を分けて洗い出す作業も行いました。それぞれのワークは30分〜1時間程度で行われました。

2. 単位化(情報の粒度を揃える)

出てきた情報は粒度がバラバラで、重複もあります。この後のプロセスで、グルーピングやマッピングを行うために、事前に扱いやすいような形に整形しました。また、重複などがあった場合はまとめて、適当なまとまりで区切って「単位化」し、ひとつの単位に対して一行で見出しをつけました。

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例えば以下のような3つのポストイットがあった場合

・似てるけど、少し見た目が違うコンポーネント
・案件ごとにUIを決める→局所最適
・同じ役割のコンポーネントが複数ある

これらをまとめて「プロダクト内でUIの整合性が取れていない」という見出しをつけてまとめました。一行で簡潔にわかるように、でも必要な部分をそぎ落とさないよう注意しながら進める必要があります。

3. 空間配置(グルーピング)

一行見出しのついた束で近しいものを並べてグルーピングをおこないます。グルーピングは小さいグループを作って徐々に統合していきます。大きいグループを作って分解していくやり方だと、事前に頭の中にある情報のバイアスがかかってしまい、本題を見失いやすいため悪手とされています。

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4. A型図解(関係性を図示する)

KJ法で図解化するプロセスをA型図解といいますが、これは同じグループを輪で囲い、関係性を矢印で表すことで、空間配置されたポストイットの束の関係性を図示していくプロセスです。

相互関係のあるものを↔︎で表したり、原因・結果のあるものを→で表したりすることで、それぞれどのような関係性にあるかと言うのを視覚的にわかる状態にします。

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2の単位化からこのフェーズまで、半日程度で整理を行いました。

5. B型文章化(言語化)

文章で言語化を行うと、論理破綻や考慮漏れに気付くことができます。A型図解で関係性を可視化しても、それだけでは「関係がある」ということはわかっても、メカニズムや性質、強度など詳細な情報は表現しきれません。ここでKJ法のB型文章化を行うことで、A型図解では考えきれていなかった、よりロジカルな思考で問題を捉えます。

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6. A型図解↔︎B型文章化を繰り返す

B型文章化のプロセスを挟むと、先に行なっていたA型図解のロジックの不整合に気付きます。A型図解では右脳寄りの思考、B型文章化では左脳寄りの思考で事象を捉えるため、この2つを行き来することで精度が上がっていきます。(複数回並べ替えを行うことになるため、プロセスの途中でオンラインのホワイトボードツール「Miro」に移行しました)

現状の課題整理 (2)

矢印がたくさん出て行くところが問題の原因、入って行くところが問題の結果起きている事象で、プロセスを繰り返すことで問題の関係性が浮き上がってきます。

A型図解とB型文章化は互いに弱点を補完し合っていて、相互に思考のチェックをする役割を持っています。そのため、A型図解で満足してB型文章化をやらずに終わってしまうのは、"貫通しないトンネル"に例えられます。

"トンネルは貫通しなければ無意味である。10m幅のトンネルが9割9分貫通しても無意味だが、1m幅であっても貫通すれば意味がある"

全てのフェーズで関係者を巻き込むのは時間も労力もかかるため、B型文章化からは個人で半日程度かけてワークを行いました。

7. 簡略化

人に伝える時は関係性を把握するのが難しいため、関係線をシンプルにしてメインの関係がわかりやすくしたものも作成しました。目的に応じて、ツールやアウトプットの形、見せ方を工夫することでステークホルダーとのコミュニケーションがスムーズになります。

【ガイドライン】解決策洗い出し (2)

プロセスを通して得られたこと

以上が『発想法』を参考にして行なった、課題のマッピングプロセスになります。この一連のプロセスによって、問題定義のプロセスに携わったメンバーはもちろん、プロセスに携わらなかったステークホルダーとの間でも「自分たちはこういう問題を解決しようとしているんだ」という共通認識を作ることができました。

KJ法を元に問題定義を行なった後は、得られたアウトプットを元に、何のため/誰のためにやるのかという方向性の整理を行い可視化しました。

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このようにして少しずつステークホルダーを巻き込んでいった結果、チーム内外で協力してくれる人も増え、プロジェクトが前に進むスピードが見違えるように改善しました。

整理した方向性をベースにデザインコンセプト/デザインガイドライン/デザインプロセスの整備というプロジェクトに分けて進めた結果、当初抱えていた問題は徐々に解決されていき、チームを離れてしまった今でも運用され続けています。

最後に

本記事でご紹介したプロジェクトのように、複数の問題が絡み合っている事柄を対象にする場合、1つの問題を解決することによって、自分の見えていないところで別な問題が発生することがあります。

KJ法は文化人類学の分野で生まれた手法なので、このように複数の問題が絡み合っていたり、再現性のないケースを扱う際には相性が良かったように思います。ただKJ法はひとつの手法なので、形を取り入れるだけではなく、目的に応じて取り入れ方を考える必要があります。

今回は問題を定義する際にKJ法を使ったと言うこともあり、以下のようなポイントを意識して取り入れました。

・適切な問いを立てること
・バイアスを取り払い、客観的に事象を解釈すること
・特定の課題だけでなく、周辺の課題や環境も理解すること
・因果関係を把握して、レバレッジポイントをみつけること

KJ法を使ってみようと思っている方・同様のテーマでお困りの方がいたら、ぜひ参考にしていただければと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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株式会社リクルートライフスタイル UXデザイングループが運営する公式noteです。